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東京都在住。元保護犬の愛犬・大福(チワックス)と暮らしている。ゆっくりでソフトタッチな『おて』をする姿が話題となり、数々のテレビ番組で取り上げられたことがある。

保護犬を“迎えた”経験と“迎えなかった”経験を持つ、ななさん。そのリアルな体験から語られる、保護犬を迎えることの現実と覚悟とは。
目次
- 保護犬を“迎えた”経験と“迎えなかった”経験がある、ななさん
- 「保護犬の命を救う」ことで、先代犬との悲しみを乗り越えられた
- 初対面が5歳。トライアルもせずに迎えた、元保護犬への不安
- 「救われたのは私のほう」保護犬を迎えてわかった、保護犬の魅力
- 2匹目のお迎えを検討。保護犬・小石くんとの出逢い
- “迎えない”という選択を決断。小石くんと家族の幸せを願って
- トライアルは犬との相性を見る期間。勇気をもって断るのも1つの選択
- 命を救う別の方法も。迎えると決めたら、最後まで世話する覚悟を
保護犬を“迎えた”経験と“迎えなかった”経験がある、ななさん
ワンちゃんを家族に迎えようと考えたとき、どのような選択肢を思い浮かべますか?
ペットショップやブリーダーから迎える方法が一般的ですが、近年では保護犬を迎える人も増えています。
保護犬とは、さまざまな理由で、新しい家族を待っている犬たちのこと。
自分が保護犬を迎えることで1つの命が救えると思うと、心が動かされる人もいるのではないでしょうか。
一方、「保護犬」と聞いて、人間に懐かないのではないか、しつけをしにくいのでないか、など、扱いにくさを想像してしまう人もいると思います。
「私も、正直保護犬についてよくわかっていなかった部分があります。でも、わからないまま迎えてみた愛犬・大福は、甘えん坊で優しくて、とても育てやすい子でした」
そう話すのは、実際に保護犬を家族に迎え入れた経験のある、ななさんです。

現在のななさんは「どこから迎えても、この子が可愛いのには変わりありません」というほど、大福くんに溺愛しています。
そして、大福くんを迎えた2年後に、もう1匹の保護犬を迎えようとしました。しかし、トライアル期間に検討をした結果“迎えない”決断をしたのです。
「決して軽い気持ちでは動いていませんが、本人(犬)のことを考えて考え抜いた結果、『我が家では幸せにできない』と判断しました」
ななさんが、あえて“迎えない”選択をしたのはなぜだったのでしょうか?
また、保護犬との生活の喜びや難しさ、そして迎える前に知っておくべきこととは?
実際に保護犬を“迎えた”経験と“迎えなかった”経験、その両方を持つななさんに話を伺いました。
「保護犬の命を救う」ことで、先代犬との悲しみを乗り越えられた
ななさんは、元保護犬の大福くんを3年前に引き取りました。
「ペットロス後のお迎えにはさまざまな捉え方があるかもしれませんが、私にとっては『心の救い』になりました」

ななさんは大福くんを迎える前、先代犬との大きな別れを経験していたため、再び犬を迎えることに大きな抵抗があったのだそう。
「愛犬は、14歳になる直前で脳腫瘍で亡くなりました。私は、亡くなってからの後悔が大きかったんですね。『あのときの判断は正しかったのかな』『もっとこうしていていれば違う未来があったのかな』とか。改めて、命の責任を感じたときでした」
それから、「犬と暮らす」ということは考えられず、数年が経ちます。
「ワンちゃんを見かけると、『かわいい!』とついテンションは上がります。でも同時に、先代犬を思い出してしまい、暗い気持ちになってしまうんです。愛犬を失った事実すら受け入れるのがつらかったので、家族はだれも『もう一度迎えよう』とは言い出さなかったですね」
しかし、SNSで保護犬の存在を知り、その考えが徐々に変わっていきました。
「やはり犬は好きなので、どこかでまた一緒に暮らしたいという思いがあったんです。だけどなかなか踏み切れなくて……。人間のエゴかもしれませんが、保護犬を迎える=その子の命を救うことができるということ。そういう大義名分があることで、前に進むことができる気がしたんです」
——『命を救う』
ななさんは、先代犬への無念さや後悔を心に抱えながらも、また『犬と暮らす』理由が欲しかった、と話します。
「今生きている保護犬の子たちに、少しでもいい生活、安心できる環境を与えてあげることならできる」と自身を納得させていました。
初対面が5歳。トライアルもせずに迎えた、元保護犬への不安
保護犬に興味を持ったななさんは、日々、保護犬の譲渡サイトをチェックするように。その時にななさんの目を惹きつけたのが、当時5歳の大福くんだったのです。

ななさんはその後、さっそく大福くんを見に行くことにしました。向かった先は保健所です。
「実際に大福を見たとき、人懐っこくて心を掴まれました! 私の行った保健所では、トライアルのような“お試し飼育期間”がなく、飼えるか否か、自分たちで考えて決めるしかありませんでした」
迷いながらも、大福くんの姿に心惹かれ、迎え入れることに決めたんだそう。

ななさんは、大きな幸福が訪れるようにとの思いで「大福」と命名。こうして、ななさんと大福くんの新しい生活が始まったのです。
「もちろん、大福を幸せにする自信も、最後まで育てる覚悟もありました。ただ、子犬から育てていない犬と暮らすのが初めてだったので、正直自分がどんなふうに愛情を育んでいけるのだろう、という思いはありましたね」
「救われたのは私のほう」保護犬を迎えてわかった、保護犬の魅力
しかし、そうしたななさんの不安は杞憂に終わります。
「迎えた瞬間から、愛で溢れました!(笑)大福のかわいさを直近で感じたら、どこから迎えようが、大切な尊い命であることに変わりはないと思えたからです」
ななさんは大福くんに日々のスキンシップを心がけ、言葉や行動で愛情を伝え続けました。
「大福は人懐っこく、育てやすい子だったんですけど、今思うと最初のほうは、あまり心を開いてくれていなかったと思います。家に来た日はずっとソワソワして座ろうとしなかったし、まったく吠えなかった。だから少しでも安心してもらおうと、名前を呼んで頬をスリスリしたり、『私はあなたの味方だからね』と声をかけ続けたりしていました」

そんな日々を繰り返していると、徐々に大福くんに変化が見られるようになってきました。
「1年ほど経つと、私たち飼い主に対する態度が明らかに変わってきたんですよね。今はすっかり甘えん坊さんになって、完全に身を委ねてくれているのが伝わってくるんです。夜一緒の布団に入ってハグをする時間は至福のひと時です」
大福くんのペースでゆっくりと絆を深めてきたななさん。信頼関係を築くのに長い時間をかけたからこそ、深い幸せを感じています。
「命を救いたいという気持ちで保護犬を迎えましたが、むしろ救われているのは私のほうで。落ち込んだときに、いつも通りのブスッとした表情の大福を見ると、つい笑っちゃいますし、甘えてきてくれるだけで日々の疲れが吹き飛ぶんです。大福を迎えて本当によかったと思います」

また、ななさんは保護犬の知られざる魅力も見つけたといいます。
「保護犬はペットショップやブリーダー経由で迎える子犬と違って、すでに成犬になっているワンちゃんがほとんど。体格や顔立ち、性格などがある程度できあがってるし、病歴などもわかります」
保護犬の中には、子犬のころの可愛さがなくなった、病気になったという身勝手な理由で捨てられる子もいます。本来は、成長過程で顔つきや体つきに変化があるのも、病気になる可能性があるのも、人間も同じくどんな動物にも当然のこと。そこも含めて愛することが第一ですが、成犬の保護犬を迎えることは、そうした理想と現実のギャップを少なくし、不幸になるワンちゃんを減らすことにも繋がるかもしれません。